皆さまこんにちは!ひとしきです。
今回は「ナメハダタマオヤモリの生態」について、解説してきます。
ナメハダタマオヤモリは、オーストラリアの乾燥地帯に生息する珍しいヤモリとして知られています。このヤモリは、巣穴を自分で塞ぎ込むユニークな習性や、捕食者に対する激しい威嚇行動など、従来のヤモリ像を覆す発見が相次いでいます。
本記事では、ナメハダタマオヤモリの野生下での生息環境・行動・繁殖について可能な限り詳しく掘り下げます。
「ナメハダタマオヤモリってどんなヤモリ?」
「野生での生活を知って、飼育に生かしたい!」
このような声にお応えできる内容となっております!
専門的な内容が盛りだくさんですので、ぜひ最後までご覧ください!
基本情報

- 学名:Nephrurus levis
- 英名:Knob-tailed Gecko, Smooth Knob-tailed Gecko など
- 分布:オーストラリア西部・中部・南部の乾燥・半乾燥地帯
- 体長:成体で全長約12cm前後
- 活動時間帯:夜行性
- 寿命:10~15年
見た目の特徴
ナメハダタマオヤモリは、全体的に丸みを帯びた体形と、先端が丸い“ノブ(こぶ)”状の尻尾を持つ点が大きな特徴です。その姿から、「Knob-tailed Gecko(ノブテールゲッコー)」とも呼ばれています。
大きな頭部と大きな黒い目が特徴的で、体は丈夫でやや平たく、皮膚は粒状でざらざらしています。体色は淡いベージュと淡い黄色の混色で、不規則な暗色の帯や斑点があります。猫のような縦長の瞳孔も特徴的です。
亜種について
オーストラリアの他の多くのヤモリと同様に地域変異(亜種)が存在します。
- 中西部内陸に広く分布する基亜種N. levis levis(ナイリクナメハダタマオヤモリ)
- 西オーストラリア州沿岸部のN. l. occidentalis(ニシナメハダタマオヤモリ)
- ピルバラ地域に局在するN. l. pilbarensis(ピルバラナメハダタマオヤモリ)
いずれも砂地での生活に適応した種ですが、例えば調査ではN. levisが主にスピニフェクス草原や低木地帯で捕獲されたのに対し、近縁種N. laevissimus(色彩が淡い種)は砂丘地帯で多く見られるなど、生息環境に若干の差異があることも報告されています。
食性と生態

ナメハダタマオヤモリはオーストラリアの内陸部に広く分布し、主に乾燥地帯や半乾燥地帯の砂地に生息しています。年間降水量が少ない地域では、彼らは自ら砂を掘って浅い巣穴を作り、日中の高温・乾燥をしのぎます。この巣穴は内部の湿度が周囲より高く、体を冷やすと同時に水分蒸散を抑える役割も果たしています。
水分補給には朝晩の水滴や獲物中の水分を利用しており、雨が降った直後には活発に活動して十分に捕食・給水すると考えられています。飼育下でも水入れから直接飲まない個体が多く、霧吹きによる壁面の水滴を舐める行動が見られることがあります。
基本的に昆虫食で、ゴキブリやコオロギ、バッタ、甲虫類、クモ、時にはサソリや小型のヤモリまで捕食します。夜になると巣穴から出て地表を徘徊し、動く獲物に素早く飛びかかって捕食する行動が確認されています。
彼らは夜行性にもかかわらず、比較的低温下でも活発に行動できるとされており、15℃程度の温度でも活動が観察されるという報告もあります。逆に高温にはあまり強くなく、日中はほとんど巣穴にこもり外へ出ることはありません。
行動学的特徴

ナメハダタマオヤモリは主に夜行性で、夕暮れ頃に巣穴から出てきて活動を始めます。人工的な光に対しては警戒心を示す個体もおり、強い照明が当たると物陰に隠れる行動がみられます。
防御行動の一環か、巣穴の入口を砂で塞いで外敵の侵入を防ぐ習性も報告されています。最近の実験では、尾の先端に何らかの温度感知機能があるのではないかという仮説も提起され、熱源に対して尾を向ける行動が統計的に多く観察されたとする研究結果が示されています。音に対しても敏感で、大きな音や突然の音にストレスを感じることがあります。このストレスが原因で摂食行動に影響が出ることもあります。
外見とは裏腹に縄張り意識は強く、威嚇時に甲高い声で鳴き声を上げる習性があります。敵対者に対しては尾をうねらせ、口を大きく開けながら「キャンキャン」と鳴くことで威嚇し、場合によっては軽く咬むこともあるほどです。
危険を感じると特徴的な尾を自発的に切り離す(自切)能力も持っています。先端が丸くなっている尾は捕まれやすい形状にも思えますが、捕食者に掴まれた場合は尾を切り離して逃げることができます。ただし、多くのヤモリと違って切り離し箇所は基部のみで、再生される尾はオリジナルとは形状が変わってしまいます。
基本的に単独行動をとり、繁殖期近くにしか他の個体と交流しません。神経質かつ臆病な性質を持っているため、落ち着いた環境を好みます。
野生化での繁殖

繁殖は主にオーストラリアの暖かい季節(現地の春〜夏)にあたる10月から3月にかけて行われます。野生下では一年を通して繁殖可能とも言われますが、実際には野外で抱卵中のメスが多く見つかるのは冬季(6~8月)であり、その後の雨季前後に産卵・孵化するサイクルだと考えられます。
オスとメスは繁殖期になるとペアで行動することがあり、オスはメスの首筋に軽く噛み付いて交尾を行います。交尾に受容的なメスはおとなしくオスを受け入れますが、乗り気でないメスはその場で踏ん張ってオスに噛み返したり逃げたりするため、ペアリング時には注意が必要です。
メスは繁殖期に複数回産卵し、1シーズンに少なくとも2クラッチ、多い時で6~7クラッチ産むことができます。1クラッチあたり通常2個の卵を産み、産卵後4~6週間ほどで再び次の排卵・交尾が可能になります。
卵は真っ白で硬めの殻を持ち、メスは砂床を深く掘って適度に湿った場所に産み付けます。卵の孵化までの期間は温度によって異なりますが、26~30℃の温度条件下で、約60~70日ほどで仔ヤモリが孵化します。高めの温度ではやや早く孵化し、低めでは遅くなる傾向があります。
生まれた仔ヤモリは全長6~7cm程度で、小さいながらも成体とほぼ同じ体色・体形をしています。孵化後1年ほどで性成熟に達し、早ければ翌年には繁殖可能になります。ただし繁殖初年度の若いメスは産卵回数が少なく1クラッチのみの場合も多いため、成長に伴い徐々に繁殖数が増えていく傾向があります。オスはメスよりやや小柄になる傾向がありますが、雌雄ともに飼育下での寿命は10~15年と長く、適切な飼育環境下では長期にわたり繁殖力を保つことができます。
まとめ
ナメハダタマオヤモリの生態について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
ナメハダタマオヤモリは、オーストラリアの過酷な乾燥地帯に適応した興味深いヤモリです。砂地を掘って自ら巣穴を作ったり、威嚇時の大きな鳴き声や独特の尾の構造など、多彩な行動パターンを持っていることがわかっています。しかし、野生下での繁殖戦略や季節ごとの活動パターンは、まだ十分に解明されていない部分もあり、まだまだ研究途中の爬虫類でもありますね。
彼らの生態を深く理解することで、ペットとして飼育する際も、より楽しく、興味を持って飼育できると思います。
次の記事では、飼育環境の準備について、解説していきます!