皆さまこんにちは!ひとしきです。
今回は「ヒガシヘルマンリクガメの生態」について、解説していきます。
このリクガメは、地中海沿岸の特定地域にしか生息しない、かなり貴重な存在なんです。飼育をするなら、まずは野生下での生態をしっかり理解しておくことが大切ですね。
この記事では、ヒガシヘルマンリクガメ(Testudo hermanni boettgeri)がどこに住んで、どんな行動をして、どうやって繁殖しているのか、専門的なデータを交えつつ詳しく解説していきます。
「野生だとどんな暮らしをしてるんだろう?」
「生態を知って飼育に活かしたい!」
このような声にお答えできる内容となっております!
自然の中での生活を知ることで、飼育環境の改善や繁殖の成功率アップにもつながりますよ。
ヒガシヘルマンリクガメに関する他の記事はこちらからどうぞ ヒガシヘルマンリクガメ
基本情報

- 学名:Testudo hermanni boettgeri (Mojsisovics, 1889) – ヘルマンリクガメ東部亜種
- 英名:Eastern Hermann’s tortoise(東部ヘルマンリクガメ)
- 分類:リクガメ科(Testudinidae)リクガメ属(Testudo)
ヘルマンリクガメは現在2亜種に分類され、西部亜種T. h. hermanni(ニシヘルマン)と東部亜種T. h. boettgeri(ヒガシヘルマン)が認められている(後述)。
形態
ヘルマンリクガメは、甲長がだいたい12~20cmくらいの中型サイズです。オスとメスではちょっと体格差がありますね。実はメスの方が大きくなる傾向にあって、西部亜種ではメスが15~18cm、オスが13~15cmくらいが一般的です。東部亜種だとさらに大きくなって、メスは18cmを超える個体も多く、オスも15.5cm以上なんていう報告もあります。
ちなみに、これまでの最大記録はブルガリア産の個体で、なんと34.6cm! 体重も成体になるとだいたい2kgくらい、個体によっては2.5kgになることもあるそうですよ。
甲羅の形は高いドーム型で、背中の甲羅には黄色と黒の美しい斑紋がはっきりと出ています。それから、尾の先端に「尾端臀甲(びたんでんこう)」っていう、カメらしい特徴的な角質のトゲがついているのもポイントですね。
寿命
ヒガシヘルマンリクガメは、かなり長生きな種類です。野生下では普通に35~45年くらい生きると言われています。標識再捕獲(しるしをつけてまた捕まえて調べる調査)で長寿の個体も確認されていて、中には90年以上生きたという驚きの記録もあるんですよ。
それに、飼育環境がしっかり整っていれば、50年以上生きることはまったく珍しくありません。大事に育てれば、一緒に何十年も過ごせるパートナーになってくれるカメなんですね。
分類と亜種間の違い

ヘルマンリクガメ(Testudo hermanni)は、地中海沿岸をぐるりと囲むように分布しているリクガメで、大きく分けると2つの亜種が知られています。ひとつは西ヨーロッパに生息している西部亜種(ニシヘルマンリクガメ / T. h. hermanni)、もうひとつが東ヨーロッパに分布する東部亜種(ヒガシヘルマンリクガメ / T. h. boettgeri)です。
ちなみに、昔はバルカン半島の個体群を「ヘルツェゴビナリクガメ(T. h. hercegovinensis)」という、別の亜種に分類する説もあったんですが、遺伝子解析の結果、いまではその説は採用されていません。正式に認められているのは、現在この2亜種だけなんですね。
さて、この2つの亜種ですが、見た目にもいくつかはっきりとした違いがあります。
まず西部亜種の特徴からお話しすると、甲羅の地色がとても鮮やかな黄色で、甲板にある黒い斑模様がくっきりハッキリ出ています。さらに、お腹側の甲羅(腹甲)には、中央の縦線を挟んで2本の太い黒帯がビシッと走っているのが特徴ですね。ぱっと見て「おお、派手だな!」と感じる子が多いんですよ。
一方、今回紹介する東部亜種はというと、甲羅の色合いがちょっと落ち着いていて、黄褐色とか緑がかった黄色っぽい色をしています。そして黒い模様はちょっと控えめになりがちで、特に腹甲の黒い模様は点々と途切れていたり、全体的に薄くなる傾向があります。面白いことに、分布が北側にいく個体ほど、その模様はさらに薄くなると言われているんですよ。
サイズにも違いがあり、東部亜種は、西部亜種よりも大きく育つことが多いです。
しかも、リクガメはオスとメスで体の大きさに差がある「性的二形」という特徴があるんですが、東部亜種のメスはかなり大きくなるので、西部亜種のオスと比べると、体重でほぼ倍になることだってあります。
それから、両亜種ともに共通するポイントもあります。たとえば、尾の先端には「尾スパー」と呼ばれる角質の突起があるんですが、これが性成熟した個体だと特に目立ちます。そして、後ろ足の腿の内側、ここに他のリクガメが持っている「腿間腺(たいかんせん)」という小さな突起がないのも、この種の特徴なんですよ。
この特徴のおかげで、同じ地域に暮らしている他のリクガメたちと区別しやすくなっています。
ちなみに、西部亜種のヘルマンリクガメ、たとえばスペインやコルシカ島で見つかる個体は、特に明るい黄色地にくっきり黒模様という、まさに「ザ・ニシヘルマン」といった風貌です。
それに対して、東部亜種ではどうしても模様がぼんやりして見えることが多いんですね。
なお、ニシヘルマンリクガメとヒガシヘルマンリクガメでは、ヒガシヘルマンリクガメの方がペットとして流通量が多く、価格も比較的安価であるため、より一般的に飼育されていますね。
分布域と生息環境

ヒガシヘルマンリクガメは、バルカン半島を中心にかなり広い範囲に分布しています。具体的には、アルプスの南側にあたる東ヨーロッパ一帯で、バルカン半島の全域から、ヨーロッパ側のトルコ、さらに東部地中海に浮かぶいくつかの島でも確認されています。
生息環境も幅広く、海沿いの砂丘や低木地帯から、標高1300メートルにもなる山間部の開けた森林地までいろいろな環境で暮らしているんですね。しかし、いちばんたくさん見つかるのは標高500メートル以下の丘陵地帯。特に、石灰岩がゴロゴロ転がっていて、日当たりの良い疎林や低木林、草地なんかは「ザ・ヒガシヘルマンの楽園」といった感じですね。
このカメたちは、典型的な地中海性気候(冬に雨が降って、夏は乾燥するタイプの気候)によく適応しています。たとえば、オリーブやマキの木がパラパラと生えているような疎林や、乾いた草原、灌木林、そして時には農地の周りなんかにもよく現れます。特に、日光浴にピッタリの岩があちこちにあって、植物が生い茂りすぎていない「半開放的な環境」がこのカメたちのお気に入りなんです。
さらに、産卵には土壌が柔らかくて掘りやすい、なだらかな斜面がある場所もポイントになります。そういった場所があると、より安定した個体群を維持できるんですね。
一方で、西部亜種(緑色で示される地域)はというと、ちょっと事情が違います。フランス南東部やスペイン北部など、かなり限られた地域にしか分布しておらず、そのうえ生息地が細切れになってしまっていて、状況はかなり深刻です。
実際、ヘルマンリクガメ全体としては、IUCNレッドリストで「近危急種(Near Threatened: NT)」に指定されていますから、油断はできません。
ヒガシヘルマンリクガメについては、場所によってはまだ比較的たくさん見られる地域もありますが、全体的に見ると、どこも問題を抱えています。たとえば、生息地が開発で失われたり、山火事が起きたり、さらにペット目的で違法に採集されてしまうことも多いんです。こういった理由で、個体数は全体的に減少傾向にあると言われていますね。
食性

ヒガシヘルマンリクガメは、基本的には植物食です。野生下では、季節に応じていろいろな種類の草本を中心に食べています。実際に野生個体の胃の中を調べた研究があって、そのデータによると、なんと134種もの植物(46科にわたる種類)が食べられていたんですね。
特に好んで食べているのは、キク科(Asteraceae)やマメ科(Fabaceae)の一年草。これらは地中海沿岸ではとてもポピュラーな植物たちで、春先からよく生い茂るんです。他にも、キンポウゲ科(Ranunculaceae)やイネ科(Poaceae)の草本もよく食べていますね。
逆に、木本植物(もくほんしょくぶつ)――つまり木の葉っぱや樹皮、それからタイムやラベンダー、マツ属などの強い香りや樹脂を持つ植物は、あまり好まない傾向があると言われています。毒性のある植物も、うまく避けているようですね。
それからちょっと意外かもしれませんが、活動中に見つけたキノコや落ちた果実、場合によっては動物の死骸(腐肉)や糞、羽毛、骨のかけらなんかも少しずつ食べていることがわかっています。これらは、カルシウムやタンパク質を補給するための「動物質」として役立っているんです。
つまり、ヒガシヘルマンリクガメは基本的に植物を食べるんですが、野生では雑食性に近い面もあって、季節によって変化する環境に柔軟に対応している、そんな戦略家でもあるんですよ。
行動パターン

日周・季節リズム
ヒガシヘルマンリクガメは昼行性で、日中に活動するタイプのカメですね。でも、活動の時間帯は季節や気候によってかなり柔軟に変わるんです。
春や秋などの過ごしやすい季節には、朝から夕方まで1日中のんびり活動していることが多いんですが、真夏の暑さが厳しい時期には、活動パターンをガラッと変えます。いわゆる「二峰性(にほうせい)」ってやつですね。つまり、朝と夕方の比較的涼しい時間帯だけ活動して、日中の一番暑い時間帯はじっと休んで体力を温存する、そんな生活リズムになります。
実際、フランスで行われた半飼育環境下での調査では、5月から8月の夏真っ盛りの時期、94%の個体が日中は活動を完全にストップして、朝と夕方だけ動いていたそうですよ。
ただし、セルビアや標高の高い山地など、夏でも気温が上がりすぎない場所では、一日中活動する「単峰性(たんぽうせい)」のパターンを続けることもあります。
全体的に見ると、春(4月〜6月)と秋(9月〜10月)に食欲と活動量がぐっと増える時期があって、特に春は繁殖シーズンでもあるので、よく動き、よく食べます。逆に、真夏(7月〜8月)は暑さのせいで、活動も繁殖行動も少し控えめになるんですよ。
ちなみに、暑く乾燥した年には「夏眠」に入る個体もいて、地面に潜ったり、じっとして体力の消耗を防いでいる姿が見られます。これも賢い生き方ですよね。
冬眠
さて、ヒガシヘルマンリクガメは地中海沿岸に住んでいるとはいえ、冬には気温がしっかり下がります。だから、野生下ではきちんと冬眠をするんです。
冬眠の時期は10月下旬から11月ごろに始まり、翌年の2月から3月くらいまで続きます。ただし、冬眠に入るタイミングは地域によっても違うんですよ。たとえば、ギリシャのような南の地域だと10月末にはもう冬眠に入る個体が多いですし、イタリアでは11月後半になってから冬眠を始める子もいます。
そして、地中海沿岸の地域では、2月の終わりから4月のはじめにかけて、日中の気温が安定して15℃以上になると地表に出てくるんです。冬眠中は、落ち葉の下や、地中に自分で掘った浅めの穴の中で過ごします。そこで代謝をぐっと下げて、エネルギー消費を最小限に抑えながら寒さに耐え抜いているわけです。
冬眠中は心拍数や呼吸数もかなり減少していて、冬眠前にはしっかり排泄を済ませて腸の中をきれいにしておくんです。そうしないと、消化器の中で腐敗が起こったり、病気になったりするリスクがありますからね。
体内では、秋のうちに蓄えておいた脂肪やグリコーゲンを少しずつ使って、春になったらまた肝臓の機能が回復し、代謝が活発になって活動を再開する…という流れです。
繁殖について

繁殖期と交尾行動
ヘルマンリクガメの繁殖シーズンは冬眠明けの春から本格的にスタートします。
冬眠から目覚めると、オスたちは2~3月ごろからメスを追いかけ始め、5~6月の産卵期を除けば、秋口(9~10月)まで交尾が観察されています。特に、晩夏(8~9月)になると交尾の頻度が上がることがわかっていて、これは、繁殖のためのエネルギーを蓄えたオスと、涼しくなって繁殖の受け入れ態勢が整ったメスの両方にとって、ちょうどいいタイミングだからだと考えられています。
ヘルマンリクガメの交尾は乱婚的で、一夫一妻ではなく、オスもメスも複数の相手と交尾するんですよ。オスは発情すると、メスの後ろから猛烈にアピールします。たとえば、後ろ足に噛みついたり、甲羅を体当たりさせたりと、なかなか強引な求愛をするんですね。
求愛のときには、オスが首を上下に振る「ヘッドボビング」をしたり、実際に鳴き声を出してアプローチすることもあります。オスの高い鳴き声や見た目の特徴を見て、メス側も「このオスでいいかな?」と判断することが考えられています。
嗅覚も重要で、オスはメスの匂いを嗅ぐことで、「同じ種の異性かどうか?」を見分けているみたいですね。交尾は数分から十数分ほど続き、その間オスはしばしば鳴き声をあげるんですよ。
交尾の前後には、オス同士のメスをめぐるバトルが発生することもあります。噛みつき合ったり、甲羅を激しくぶつけ合ったりと、なかなか迫力のある争いが繰り広げられるんですね。
産卵と発育
メスは交尾を終えると、春から初夏(5~7月)にかけて産卵します。日当たりの良い地面を後ろ足で一生懸命掘って、深さ数センチの巣穴を作り、その中に、1回の産卵で2~7個(平均4個前後)の卵を産みます。メスの体が大きいほど、産卵する数も多くなる傾向があり、大きな個体だと年に2回以上産むことも珍しくありません。飼育下では、条件が良ければ最大で年3回産卵した例も報告されています。
卵のサイズは、長さ約35~40mmほどで、殻は硬めです。地中で約80~100日間(平均90日ほど)かけてゆっくり成長していきます。
この孵化までの日数は気温によって変わり、たとえば、夏の平均気温が高い年には約70日と短めになりますが、逆に涼しい年は100日以上かかることもあります。
ヘルマンリクガメの性別は、他の多くのカメ類と同じく「温度依存型の性決定(TSD)」という仕組みで決まります。つまり、孵化時の温度によってオス・メスの割合が変わるんですね。
おおよそ33℃付近で孵化した場合はオスが多くなり、30℃以下や34℃以上になると雌雄比が1:1に近づくという研究結果があります。
孵化した子ガメの成長
孵化したばかりの子ガメは、甲長30~36mm、体重9~13gほどの小さなサイズです。
生まれたばかりの子ガメは、しばらく巣穴や落ち葉の下にとどまって、卵黄の栄養を吸収しながら甲羅がしっかり固まるのを待つんですよ。この時期はまだとても無防備なので、すぐに遠くへ移動せず、しばらくの間は巣穴周辺でじっとしていることが多いですね。
野生下での性成熟は、約8~12年齢で、甲長が10~12cmを超えると繁殖行動が見られるようになります。ただし、成長のスピードは環境によっても変わります。たとえば、飼育下では餌や温度管理が安定しているため、5~6年で繁殖可能になった例もあるんですよ。
メスは成熟後も体が大きくなるにつれて、産卵数が増えていく傾向があり、高齢のメスになると一生のうちに数百個の卵を産むこともあります。
とはいえ、野生の世界ではそう簡単に成長できるわけではありません。実は、卵や孵化したばかりの幼体は非常に高い確率で捕食されてしまいます。キツネやアナグマ、イノシシなどの哺乳類に巣ごと掘り起こされて全滅してしまうケースは90%以上にのぼるという報告もあります。
それでも、ヘルマンリクガメが今も生き残っているのは、寿命が長く、一生のうちに何度も繁殖する機会があるからなんですね。長く生きることで、厳しい自然環境の中でも次の世代を残していける可能性を高めているわけです。
まとめ
ヒガシヘルマンリクガメの生態について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
こうした自然界での行動パターンや食性、産卵のタイミングをしっかり理解しておくと、飼育下でもその生き物本来のリズムに合わせた環境づくりができると思います。
健康管理や繁殖を成功させたいなら、こうした情報が重要になってきますよね。
それではまた、別の記事でお会いしましょう!