【フトアゴヒゲトカゲの生態】生態情報や野生下での捕食、繁殖に関する情報を解説!

トカゲ
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皆様こんにちは!ひとしきです。

今回は、「フトアゴヒゲトカゲの生態について解説!」と題し、ペット爬虫類の中でも非常に人気の高い「フトアゴヒゲトカゲ」の生態について解説していきたいと思います。

フトアゴヒゲトカゲはその穏やかな性格やとぼけたような仕草、カッコイイ外見に加えて飼育難易度が比較的低いことから、多くの爬虫類愛好家が飼育しています。初心者向けといわれることも多く、SNSなどでも多くの投稿を見かけますね。

そんなフトアゴヒゲトカゲについて、基本情報から順に解説していきます。

「フトアゴヒゲトカゲってよく知らない…」

「かっこいいフトアゴを飼育したい!」

という方は、ぜひ最後までご覧ください!

野生での生存戦略を知ると、飼育下における管理のヒントがたくさん得られるのが面白いですよね!

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基本情報

  • 学名: Pogona vitticeps
  • 英名: Central Bearded Dragon(Inland Bearded Dragon)
  • 分布: オーストラリア中央部~東部内陸の乾燥地帯
  • 全長: 約40~60cm(尾を含む)
  • 寿命: 約10年(野生下)~20年(飼育下)​
  • 活動時間: 昼行性

体は平たくずんぐりとしており、頭部は三角形で頬から側面、喉にかけてトゲ状の鱗が並びます。その外見から全身が粗い質感に見えるのが特徴です​。体色は灰色やクリーム色から明るいオレンジ色まで個体差があり、環境によっても変化します。

威嚇時には皮膚の色素を濃く変化させ、特に喉元の「顎ヒゲ」を黒く染めて膨らませます​。このヒゲ状の垂れ下がった喉の鱗を広げる姿が「ビアード(髭)」に見えることが英名の由来です。また、成体は地味な体色傾向ですが、幼体には背中に明瞭な縞模様が入るなど年齢や性別によるわずかな差異もみられますね。

食性と天敵

食性

フトアゴヒゲトカゲは雑食性のトカゲで、昆虫などの動物質と植物質の両方を食べます​。

一般的な野生個体の食餌内容は体積比で約40%が動物質、60%が植物質ですが、季節によって変動があります​。たとえば雨季には羽アリ(シロアリの有翅虫)が大量発生し、それを集中的に捕食するため、一時的に昆虫の割合が非常に高くなることがあります(最大95%がシロアリの群飛個体だった例も報告されています)​。

主な餌はバッタやコオロギなどの昆虫ですが、小型のトカゲやネズミを襲うことも記録されています​。植物質では花や果実、若葉なども食べており、季節に応じて入手しやすい餌を選ぶ機会捕食者ですね​。

天敵

野生下での天敵には、大型の猛禽類(ワシ・タカ類)や大型のヘビ、オオトカゲなどの爬虫類のほか、キツネやディンゴなど哺乳類捕食者も含まれます​。フトアゴヒゲトカゲ自身は食物連鎖上、中型の捕食される立場にあるため、多様な捕食者に狙われます​。

こうした捕食者から身を守るため、本種は独特の防御行動を発達させています。危険を感じると体を扁平に伏せて側面積を広げ、肋骨を張って姿を大きく見せるとともに口を大きく開き、喉のヒゲを膨らませて黒く変色させます​。一見すると全身が棘だらけの大きな生物に見えるため、捕食者に攻撃を思いとどまらせる効果があります​。それでも危険が去らない場合は、ヒュッと小さく跳ねるような威嚇動作や威嚇音(小さな鳴き声や威嚇的な呼気音)を発することもあります​。

野生での生態

フトアゴヒゲトカゲは、昼行性のライフスタイルを送るトカゲです。

日中になると活発に動き回って、餌を探したり、バスキング(ひなたぼっこ)にいそしんだりしています。朝はまだ体温が低い状態なので、岩の上や倒木の上、あるいは低木の枝先なんかでじっと動かずに日光浴をしている姿がよく見られます。体を温めてから、ようやく一日が始まる…そんな感じですね。

日中は、地上や低木の上を歩き回って餌を探しつつ、フェンスや倒木に登って日光浴を繰り返します。
ただ、真昼の気温がぐっと上がると、さすがに暑すぎるので、地中の穴や茂みの陰に避難して、体温の上がりすぎを防ぐ工夫をしています。それでも暑すぎるときは、口を開けて「パンティング」と呼ばれる浅くて速い呼吸をして、気化熱で体を冷やします。さらに、地面の熱が伝わらないように、体を持ち上げて四足で走ることもできるんですよ。

夜になると、地表近くの穴や物陰に隠れてじっと休みます。こうすることで、外敵に見つからずに安全に過ごせるわけですね。

そして冬になると、野生の個体は「ブルーメーション」と呼ばれる冬眠に近い休眠状態に入ります。土の中や倒木の隙間にじっとこもって、代謝を落として過ごし、春が来て気温が上がると、また元気に活動を再開し、繁殖期に突入します。

社会性

縄張り

フトアゴヒゲトカゲは基本的に単独行動が好きな、いわゆる「ひとりが気楽派」なトカゲです。

でも、日光浴にちょうどいい岩や倒木は限られているので、そこに複数個体が集まることもあるんです。その場合、自然とゆるやかな階層ができて、強い個体が高い場所や日当たりのいい場所をキープするんですね。

オスの成体は繁殖期になると、特に縄張り意識が強くなります。他のオスが近づこうものなら、頭を激しく上下に振ったり(ヘッドボビングといいます)、顎のヒゲを黒くして膨らませたりして、「ここはオレの場所だ!」と威嚇します。それでも引かない相手には、取っ組み合いのバトルになることも…。この勝負に勝ったオスが、そのエリアでの交尾権を得るわけです。

一方、メスや若い個体は縄張りを持たないことが多く、オスみたいに攻撃的になることはあまりありません。穏やかに過ごすタイプですね。

コミュニケーション

フトアゴヒゲトカゲは、鳴き声でのコミュニケーションはほとんどしません。
じゃあ、どうやって意思疎通するの?と思いますよね。答えはボディランゲージ。動きや姿勢、体色の変化を使って、しっかり相手にメッセージを伝えています。

先ほども例に挙げましたが、「ヘッドボビング」は、頭を縦にカクカクっと上下させる動作です。これは、オスや優位個体が「オレは強いぞ!」とアピールするときによく使われます。繁殖期のオスだと、顎のヒゲを黒く膨らませながら、ものすごく堂々としたヘッドボビングを見せてくれますよ。

逆に、「アームウェービング」は、片方の前足をゆっくり円を描くように動かす動作です。これはメスや劣位個体が、「争うつもりはないですよ」「あなたに服従します」と伝えるサインなんですね。メスは、繁殖期に交尾相手のオスに対して、このアームウェービングと、ゆったりとしたヘッドボビングを組み合わせて、「OKですよ」という受け入れの意思を示します。

さらに、顎や体を黒くして自己アピールを強めたり、体を扁平に広げたり、逆に立ち上がって存在感を出したり…。視覚的なサインを駆使して、実に多彩なコミュニケーションを取っているんですよ。

野生下での繁殖

繁殖期ときっかけ

野生個体は、南半球の春にあたる9月から11月頃に繁殖期を迎えます。この時期は、冬季の休眠から目覚めて、気温や日照時間が大きく増加してくるんですね。その変化に合わせて、オスは繁殖行動を活発化させます。

繁殖行動が始まるきっかけは、「冬の低温期間をしっかり経過すること」と「春先の気温上昇や日照時間の延長」といった環境要因が関与していると考えられています。つまり、きちんとした季節サイクルを経ないと、うまく発情状態にならないんですね。

交尾行動とメスの選択

繁殖期に入ると、優勢なオスたちはさらにアクティブになり、特にディスプレイ(誇示行動)に力が入るんですよ。オス同士は、縄張りやメスを巡って激しい争いを繰り広げます。力関係が決まるまで、これが何度も繰り返されることもあるんです。

一方のメスはというと、じっくりその様子を観察しています。そして、優勢なオスがはっきりすると、その個体に対してだけ交尾の受け入れサインを出します。具体的には、前肢をゆっくり回すようなアームウェービングと、穏やかなヘッドボビングを組み合わせる動きで、「OKですよ」というメッセージを送るんですね。このサインを受け取ったオスは、顎を黒くしたまま素早くメスの周囲を移動し、タイミングを見計らって乗りかかります。

交尾の際には、オスがメスの首元に軽く噛みついて体位を安定させる動作が見られます。この行動は、トカゲ類全般によく見られる典型的な交尾パターンですね。

ちなみに、メスの交尾相手の選び方はまだ詳細に解明されていませんが、一般的には体格が良く、行動が活発であるなど、優れたオス(たいてい闘争で勝ち残った個体)が選ばれる傾向が強いと言われています。

産卵と卵の管理

メスは交尾から数週間から1か月ほどの間に産卵に入ります。タイミング的には、春の終わり頃、だいたい10月から11月にかけてが多いですね。

産卵が近づくと、メスは柔らかく掘りやすい土壌を探して歩き回ります。そして場所が決まると、前肢を使って穴掘りを開始。だいたい20~30cmほどの深さまで掘り進めて、そこで一度に11~30個前後の卵を産み落とします。

産卵が終わると、メスは後肢を使って丁寧に土をかけ戻し、卵を完全に埋めて隠します。これは、外敵から卵を守るための防御策ですが、一度産卵を終えたメスは、その場を離れてしまい、もう戻ってくることはありません。

孵化と成長プロセス

土の中に埋められた卵は、そのまま自然環境下で孵化のタイミングを待ちます。孵化までの日数は環境条件に左右されますが、だいたい50〜80日程度とされています。

発育が進んだ幼体は、卵殻を破るための、「卵歯」と呼ばれる小さな突起を使って卵殻を破って出てきます。孵化したばかりの幼体は全長10〜13cm程度。体はまだ柔らかく、外敵に狙われやすい時期ですが、生まれた直後から自力で小さな昆虫や植物の新芽を捕食し、エネルギーを蓄えながら成長していきます。
幼体はエサをどんどん食べて、驚くほどのスピードで大きくなります。野生下では、生後1年で30cm近くに達する個体もいますし、早ければ1年程度で性成熟を迎え、繁殖に参加できるようになります。

ただし、成熟まで生き残るのは一部の個体のみ。多くの幼体は捕食者によって淘汰されますが、運よく生き延びた個体は、10年前後の寿命までしっかりと成長を続けることができます。
野生下での生存競争は厳しいですが、その過酷さが彼らのタフさを育てていると言えますね。

まとめ

「フトアゴヒゲトカゲの生態」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

フトアゴヒゲトカゲの野生での暮らしを理解することで、生息地に近い環境や行動機会を飼育下で提供でき、結果的に健康でストレスの少ない飼育につながります。

その丈夫さと人馴れしやすさからペットとしても人気のフトアゴヒゲトカゲですが、私たち飼育者は野生本来の生態に学びながら適切に世話をしていくことが大切ですね。

それではまた、別の記事でお会いしましょう!